「大学生はアルバイトをして社会経験を積むべき」なんて意見が世の中に横行しています。仕事をすることで得られる経験はとても重要なことですが、仕事が忙しくて勉強の意欲が失われたり、単位を落としてしまったりと、アルバイトを行うデメリットも少なくはありません。
この記事では「本当に大学生はアルバイトをするべきなのか?」ということを調べました。結論を言うと、「就活とか勉強の影響を考えるなら1年か2年だけアルバイトしろ」です。
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大学生のアルバイト状況
日本学生支援機構(JASSO)が行っている調査では、アルバイトを行っている学生は84%でした。
こちらが平成28年度のデータで、アルバイトをしている学生の数は年々上昇しています。前回の26年度調査では74%だったのに対し、2年間で10%も上昇していることとなります。
また、当然ですが両親の年収が高いほどアルバイトをしている学生の数は少ないようです。
10人のうち8人以上がアルバイトをしていると考えれば、非常に大きな割合だと言えます。
「大学生はアルバイトで社会経験をすべき」という意見もある通り、かなりの数の大学生がアルバイトを行っている結果となりました。
参考:https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2016.html
大学生はなんのためにアルバイトをするの?
では、大学生はなぜアルバイトを行うのでしょうか?
あまり大っぴらには言えませんが、アルバイトは非常に面倒くさいものでもあります。ただ、それでも働いている大学生は8割を超えています。
「趣味をするお金がほしい」「学費を稼ぐため」「就活で使えるから」などなど、アルバイトをする理由は人それぞれですが、主なものをまとめてみます。
欲しいものを買ったり趣味に当てる
大学生というのは、考えていたよりも出費が嵩むものです。
旅行や飲み会に参加したり、ファッションに気を使ったり。はたまた資格の勉強をするために参考書を買ったり、レポートで使うパソコンを購入したり。
高校生のころとは違い交際費などを親に頼ることはあまりできず、自分でお金を工面しなければなりません。
中には「大学生になったんだから、バイトして自分で買いなさい」と言われるケースもあり、自分のものは自分で買う必要があります。
私たちが小学生や中学生の頃には、大学生に対して「アルバイトをして好きなもの買えて良いなー」と羨望を抱くことがありました。
憧れの目で見つめるだけだった子供も、いつかは大学生になって好きなものを買うためにアルバイトを始めるのです。
学費や生活費を稼ぐため
とはいえ、趣味や好きなものを買うためだけにアルバイトをしている学生ばかりではありません。
なかには大学の学費や一人暮らしの生活費を稼ぐためにアルバイトをしている真面目な学生も存在します。
大学4年間で必要となる金額は、学費だけでも合計500万円近くなります。一人暮らしの生活費を含めるとそれ以上になり、親が全て負担するのは難しいでしょう。
福岡教育大学の末冨教授の研究によると、学費を親が負担する家庭は全体の3割程度という結果が出ています。
この数字は年々増加しており、学費を捻出するためにアルバイトをしたり奨学金を借りる学生は少なくありません。
参考:https://www.jasso.go.jp/gakusei/archive/dtog/__icsFiles/afieldfile/2015/11/17/daigaku536_06.pdf
社会勉強のため
社会勉強のためにアルバイトを始める学生も一定数存在します。
お金を貰って仕事をすることで責任の重さを認識したり、接客業でコミュニケーションを磨くことが目的です。
アルバイトをせずに社会に出ると「仕事の大変さ」に苦心する人も多いので、アルバイトを「社会人として働くための練習」と捉える人も少なくはありません。
もちろん仕事なので時にはストレスを感じることもあります。
社会人になると「仕事でのストレス」が多くのしかかるので、その時のためにストレス耐性を付けておきたいという気持ちもあるようです。
就職でアピールするため
「アルバイト経験なし」が就活でデメリットになると考え、就活のためにアルバイトを始める人も存在します。
志望先と同じ業種のアルバイトだと有利になりますし、入社後も現場の経験があれば頭一つ抜けた人材になれるでしょう。
また、就活でよく聞かれる質問として「大学時代で頑張ったこと」というものがあります。
問題解決能力を見定める質問なのですが、いきなり聞かれてもスラスラ答えられませんし、大学1年生のころから準備をしていなければ回答することは出来ません。
学生時代に頑張ったこととしてアルバイトを挙げるために働き始める学生も多いようです。
アルバイトをしない理由はなに?
では反対に、「アルバイトをしない理由」は何があるのでしょうか?
アルバイトをしない学生は約16%存在し、アルバイトをしない学生の理由について解説をします。
「お金を稼ぐ必要がない」「勉強に集中するため」などなど、主な理由を挙げていきます。
お金を稼ぐ必要がない
最も多いのが、「お金を稼ぐ必要がない」という意見です。
先ほど「親が学費を負担する学生の割合」を3割と述べました。学費を稼ぐためにアルバイトをする学生もいるので、反対に学費を親が出している場合はアルバイトをする必要はありませんね。
また、仕送りやお小遣いなど、大学生の子供に学費以外の支援を行っている親もいるようです。
他にも「奨学金を借りているため学費を稼がなくていい」というケースもあります。
日本学生支援機構(JASSO)は進学が困難な学生に対して奨学金の貸し付けを行っており、調査によると大学生の約50%が奨学金を利用しています。
参考:https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2016.html
学業に専念したい
アルバイトを始めると時間的な制限が出来るので、それを嫌ってアルバイトをしない学生もいます。
例えば「1日5時間、週3日」アルバイトをするとすれば、週に15時間もアルバイトに時間を割かなければなりません。
大学の講義が1つ1時間半なので、ちょうどアルバイトのために授業10つ分の時間がとられることになります。
あくまで学生の本分は勉強をすること、と感じている方も少なくは無いのでしょう。
アルバイトをしないことで浮いた時間を使って勉強を行う、勤勉な学生も少なくはありません。
忙しくてやってられない
忙しくてアルバイトをする暇がない学生も存在するでしょう。
多くの学生はアルバイトに時間を割いても取得単位の余裕はありますが、そうでない学生も一定数います。
必ずしも「サボって単位が足りなかった……」などの悪い理由だけではなく、医学部や教職課程の学生などは「フルで講義を取っても単位がカツカツ」という場合もあります。
入試の難易度の高い学部ほど単位取得が厳しい状況もあり、必ずしもすべての学生がアルバイトを行う余裕があるわけではありません。
働きたくないから
「大学を卒業したら毎日働くのに、なんで大学生でも働かないといけないの?」と思う方も多いでしょう(笑)
卒業後は定年の60歳前後までおよそ40年間働くのに、自由に遊べる最後の大学生活で働く意味があるのか疑問ですよね。
「40年働くなら4年間遊んでてもいいだろ!?」と思う気持ちはとても分かります。
アルバイトをするメリット・デメリット
それでは、大学生がアルバイトをするメリットとデメリットはどんなものがあるのでしょうか?
先述した「アルバイトをする(しない)理由」と被る部分もあるので、簡単に記載していきます。
アルバイトをするか迷っている大学生は、是非参考にしてみてください!
アルバイトをするメリット
- 金銭的に余裕が出来る
大学生の生活は想像以上にお金がかかります。もしアルバイトをしていなければ、場合によっては飲み会や遊びの誘いなどを断らないといけません。他にも、サークルやゼミなどでもお金はかかるので、アルバイトをしなければ辛いかもしれません。
- 交友関係が広がる
アルバイトでは大学以外の交友関係を築くことが可能です。特に年上の方や社会人の方と知り合えるのが出来るのが大きいです。働いていて大変なこととかを聞けるので、卒業する前に色々と勉強ができます。
- 社会勉強になる
お金を貰って働いている以上、楽しいことも苦労することもあります。ただ、社会に出る前にそれを体験できるのは貴重な機会でしょう。
- 就活の話題にできる
面接の時に話題にできます。「学生時代に頑張ったこと」でネタにしやすい内容ですし、志望先と同じ業種なら「経験アリ」として多少色を付けて評価してもらうことが出来ます。
アルバイトをするデメリット
- 勉強に集中できない
「アルバイトのせいで勉強に集中できない……」という学生は意外と多く居ます。「今日バイトあるから勉強する気起きないや」と、アルバイトの日には勉強のやる気が出ない人も存在するので注意が必要です。これが原因で単位を落とすケースもよく見るので、メリハリをつけて行う必要があります。
- 時間的な余裕がなくなる
「週3日、1日5時間」働くならば、「大学の講義10回分(15時間)」消費することになります。この数字が多いか少ないかは履修状況によっても変わりますが、アルバイトをしただけ自由に使える時間は確実に少なくなります。
- ストレスがたまることも
アルバイト先によっても変わりますが、精神的なストレスを抱える大学生も少なくはありません。仕事の忙しさ、人間関係、お客さんからのクレームなどなど、アルバイトでは様々なストレスを感じるでしょう。時にはアルバイトが原因で身体を壊す学生もいるので、倒れる前に辞める勇気は必要です。
勉強が疎かになると本末転倒
決して説教をするつもりはありませんが、あくまで大学生の本分は勉強です。
社会に出るために必要な知識を蓄える場所であり、アルバイトがメインとなってはいけません。
単位を落とせば卒業自体が危ぶまれますし、資格勉強などの自己研鑽を行わなければ就職後に苦労します。
そもそも、これから40年間働くわけなので、4年間くらい休んでも構わないでしょう。
大学生という時間的に余裕のある最後の時期なので、ぜひとも勉強をしておくのをおススメします。
アルバイト経験が無いと就活で不利になる
そうは言っても、「アルバイト経験ないと就活で不利になるんじゃないの?」ということは気になるでしょう。
殆どの履歴書には「職歴」を書く欄があり、もしアルバイト経験がなければ空欄になってしまいます。企業によっては空白で出された職歴にいい顔をしないかもしれません。
では、実際のところはどうなのでしょうか?
簡潔にお答えすると、「絶対評価では不利じゃないが、相対評価で不利」です。
その人だけを見たときにアルバイト経験がないから落とす企業は殆どありませんが、他の応募者と比べた場合「経験ナシ」より「経験アリ」を採用したいのが正直なところです。
能力が同じ程度で「アルバイト経験があるA君」と「経験のないB君」が残り、どちらか1人しか採用できないとしましょう。採用されるのは間違いなく前者です。
なので、一度もアルバイトをしないのはおススメできません。少なくとも一回はどこかでアルバイトをするのがおススメです。
しかしアルバイトが勉強を阻害するケースもあるので、とても難しいところですよね。
結論:1年及び2年で区切りを付けよう
「アルバイトしろって言ったりするなって言ったり、結局どっちなの!?」とお思いでしょう。
結論を言うと、全くやらないのは就活上よくないので、1年か2年しっかりとアルバイトをしてそこで区切りを付けましょう。
そうすれば「勉強時間の確保」と「就活の話題」の両方に対応できます。
正直に言うと「アルバイトで学べること」なんて1年間働いていれば身に付きますし、後半は思考停止のルーティーンが続くだけです。
はじめは色々なことを覚えるのに苦労しても、1年経ったら新しく学ぶことなんて殆どなくなります。そうなった状態でアルバイトを続ける意味は薄いでしょう。
差し当たり1年~2年アルバイトをしていれば就活でも問題ありません。
面接で「なんで2年間しかアルバイトしなかったの?」と聞かれたら、「2年間のアルバイトで学費をしっかり稼ぎ、残り2年間は勉強をしっかりする予定だったからです」と言えばいいのです。
大学に入学した際に4年間の予定を立てていたと言えば、アルバイト期間が少しくらい減っても評価は下がりません。